80年代終わり、既にUmbraは小売店のニーズに合わせて多様な家庭用品を作り出す企業へと変貌を遂げていました。
フォトフレームは過去50年の間に一般家庭に浸透して行きましたが、同時に写真の現像様式も大きく変化していました。写真撮影にはまだフィルムカメラが使われていましたが、現像はドラッグストアやスーパー等で手軽に、しかも短時間で出来上がるようになってきたことでフレームの需要も伸びていました。そういった時代の変遷にフレームは取り残されていた、と言ってもいいでしょう。市場に出回っていたフォトフレームの多くは旧態依然とした「写真立て」の域を出ないものものでした。私達が初めて制作したフレームは当初は日本の、そして後に台湾の木製フレームからヒントを得たものでした。90年代に入るとUmbraは革新的なフレームをデザインし、タイやインドネシアの工場で生産して成功を収めていました。
ある時ニューヨーク出張の際に、最近流行の兆しを見せているコラージュタイプのフォトフレームに、まだ私達が手をつけていないと指摘した営業担当者がいました。コラージュフレームとは、大きなフレームの内部に様々な形に切り抜いた紙を配置して、写真をはめ込めるようになっているフォトフレームです。私は早速共同創立者であるデザイン部長のポール・ローワンに、紙ではなく木の仕切りを使ったコラージュフレームを作れないか持ちかけました。
タイ工場からは反発がありましたが、ポールが粘り強く説得し、フランクフルトで素晴らしい試作品を見せてくれました。この、私達が初めて作った、複数の写真が飾れるフレームはあっという間に業界を席巻しました。すぐにタイ中の工場が私達の”impossible”フレームの類似品を製造するようになりました。これが初めて中国工場で製造した商品です。
時が経ち、幾多のコピー商品や類似品が消えて行きましたが、私達のコラージュフレームの人気はいまだ衰えていません。
今日では技術の進歩と共に写真のあり方も大きく変わりました。これまでになく写真が撮影されていながら、印刷される機械が激減するという興味深い時代を私達は生きています。このため多くのフォトフレームメーカーが消えて行きましたが、Umbraと彼らを隔てるものは何だったのでしょう。
私達はフォトフレームというジャンルを新しく「フォトディスプレイ」と命名し、遊び心のある、彫刻のような、あるいは幾何学的な、一歩先を行くデザインを採用し、新しい素材も積極的に取り入れています。フレームの中にはオリジナルのアート作品を入れてありますが、そのまま飾られることも多い芸術性を持っています。他社フレームによく使われているような「美貌の男女が笑顔で並んでいる」といった、間に合わせの写真ではありません。
Umbraは時代に合わせて成長し、また時代を先取りしてきました。私達のフォトディスプレイ部門はこれまでになく大きく花開いています。